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脳科学から見るマインドフルネスとヨーガ(ヨガ)

最近、アメリカで開発されたマインドフルネス瞑想が日本でもはやってきています。そもそも、ヨーガや瞑想は、インドで生まれ、日本でも仏教や密教の修行法として、坐禅などの形で、平安時代や鎌倉時代には、日本にもすでに伝わっていました。 マインドフルネス(名詞形。マインドフルは形容詞)は、仏教の修行法の一つの八正道の中の一つサティ(正念)の英語訳です。これは、「今・ここ」に良し悪しの判断無しの意識を向けるという意味です。近年、脳科学の進歩により、マインドフルな意識の向け方が、心を落ち着かせることが脳科学的に理解できるようになってきたのです。ここでは、脳科学から見たマインドフルネスやヨーガについて、簡単にまとめてみます。

マインドフルに実践するヨーガのアーサナは脳を鎮める。

ヨーガのアーサナでは、呼吸に合わせて身体を動かし、その身体感覚に意識を向け、あるがままに感じていきます。マインドフルネス瞑想では、呼吸や丹田に、マインドフルな集中を向けます。その意味で、マインドフル瞑想の意識の使い方としては、ヨーガのアーサナ時の集中と全く同じなわけです。
ここで、少しマインドフルネス瞑想について説明をします。
マインドフルネス瞑想には二つのステップがあります。

上座部仏教(小乗仏教)由来
ステップ1  サマタ瞑想 (集中瞑想:脳科学ではフォーカス・アテンション)
ステップ2  ヴィパサナ瞑想 (観瞑想:オープン・モニタリング)

はじめのサマタ瞑想(集中瞑想)は、ヴィパサナ瞑想(観瞑想)の導入のためにあります。
集中瞑想では、集中の対象として、呼吸、歩行、食べる事などを、良し判断せずに集中をしていきます。ヨーガの体位法(アーサナ)も、身体感覚に注意を向けていき、次の瞑想への準備を進めていくという意味ではヴィパサナ瞑想の準備としてのサマタ瞑想と近い意識状態です。それに加え、ヨーガでは、身体運動を伴うため、脳の運動野が活発になり、その分、良い悪いを判断する前頭前野が鎮まり、より容易にマインドフルな意識が向けられるようになります(図1)。

さて、このような集中をしていくと、神経活動の主体が「気づきの脳」にうつり、考える部位である前頭前野や不安を感じる扁桃体が鎮まり、落ち着いていきます。
 「気づき」の脳で前帯状回皮質や島皮質が関与しています(図1)。マインドフルネス瞑想実践者では、この脳部位が厚くなっていくことが報告されています。(参考書・文献1)
 ヨーガでは、さらに呼吸とあわせて身体を動かすため、副交感神経が活性化され、呼吸が深まり、より脳が鎮まり、また身体運動能力や柔軟性を同時に調整していくことで姿勢の調整にもなっていきます。

脳は、大まかにいうと3層にわかれており、「考える」(大脳皮質)、「感じる」(大脳辺縁系)、「生きる」(脳幹)の3層になっています(図2)。ヨーガのアーサナ中では、大脳皮質にある運動野や感覚野が高まり、大脳前頭前野や大脳辺縁系が鎮まっていくことが報告されています。アーサナにより、考える脳や不安を感じる脳が鎮まっていくわけです(参考書・文献3)。

マインドフルネス瞑想とヨーガの瞑想

ヨーガでは、最終的な悟りや解脱を目指し、そのために八支則を実践していきますが、現在行われているヨーガ教室では、八支則のうち、アーサナ、呼吸法、瞑想の部分をだけを実践している場合がほとんどです。八支則のうち、最後の三つがいわゆる瞑想で、凝念(ダーラナ)、静慮(ディアーナ)、三昧(サマーディ)です。禅は、静慮のディアーナという言葉からきているといわれています(図3)。

これら瞑想は、最終段階である三昧の境地、坐禅では、禅定とか心身脱落、仏教では梵我一如の境地へと導くためのものです。ヨーガでは、瞑想へ導くため、アーサナや呼吸法が大事となっていますが、意識の使い方という点では、5段階目の制感(プラティヤハーラ)が瞑想への入り口としてとても重要なステップです。これは、マインドフルネス瞑想でいう「今・ここ」に意識を向けるということです。ヨーガでは、アーサナを通じて身体感覚に意識を向けていくことで、5段階目の制感を実践していきます。
6段階目の凝念では、マインドフルネス瞑想のサマタ瞑想にあたります。それまでは、身体の動きを伴って集中していたのを、坐の姿勢で、呼吸など何か一つの対象に静かに集中していきます。   
7段階目の「静慮」は、身体感覚、自分の雑念すべてを起こるまま・あるがままに観ていく段階で、ヴィパサナ瞑想がこれにあたります。これは最後の三昧のための準備です。7段階目では、まだ観察している自分と観察されている自分との二つがある状態ですが、完全に身をゆだねた時、この二つが一体となり、ただ在るという気づきだけが残る感覚になります。これが三昧ではないかと思います。宇宙と一体となる感じです。その脳科学的な理屈は、身体感覚を司っている頭頂葉の方位連合というところの脳活動がかなり鎮まり、自分自身が広がった感覚になります。また、熟練瞑想者の瞑想中の脳は、後部帯状回という脳部位(図1)が鎮まっていることが明らかとなってます(参考書・文献2)。この部位は、自分を文脈の中(これこれの育ち方をした自分、物語としての自分など)で判断する脳部位で、この部位が鎮まると、自己同化がない宇宙と一体感となった感覚になっていきます。これは脳科学では、変性意識と呼びますが、これが三昧の境地ではないかと思われます。

マインドフルネス瞑想は、ヨーガの制感・凝念・静慮の部分を、ストレス緩和、健康、パフォーマンスを高めるという目的で切りとられてアレンジされたものといえます。また、マインドフル瞑想の一つとして行なわれるボディースキャンも、ヨーガの完全弛緩のポーズからうまれたものでヨーガに起源があります。より深い瞑想には、背骨がしっかり伸びた安定した坐の姿勢が大事で、やはりヨーガなどで身体調整によって、瞑想の前に姿勢を整えることが重要です。

 

注釈

1 サンスクリット語o、eは長母音発声yoga:ヨーガ、漢語の瑜伽訳:ヨガ

参考書・文献

1 生きるスキルに役立つ脳科学

    駒野宏人著 セルバ出版

2 あなたの脳は変えられる

ジャドソン・ブルワー著 久賀谷享監訳 ダイヤモンド社

3 ヨガによる脳活動の変化に関する脳画像的研究

Ito et al., How does yoga affect the brain.  Journal of International Society of Life Information Science.  Vol 20:473, 2002.

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